LE Audioとは何?特徴とメリット、対応スマホや対応製品について

この記事では、Bluetoothの次世代標準規格「LE Audio」の特徴とメリットについて詳しく解説します。混雑時の通信品質向上、長時間の連続使用、高音質再生など、LE Audioならではの魅力を知ることができます

Bluetoothデバイスを使ったことがある方なら、ワイヤレス通信の不便さを経験したことがあるのではないでしょうか。電車の中で音楽が途切れたり、ヘッドホンのバッテリーが長持ちしなかったりと、小さなストレスがつきものです。

しかし「LE Audio」なら、これらの問題が改善される可能性があります。LE Audioは、電波の安定性が向上し、消費電力が抑えられ、音質の向上が図られる新しい仕様です。

既存のBluetooth音声機器の不便さを感じている方は、ぜひLE Audioの可能性に注目してみてください。ワイヤレス音楽体験がより快適に進化する新時代の幕開けとなるかもしれません。

LE Audioって何?

「LE Audio」Bluetooth技術の次世代規格の1つで、音声や音楽を伝送するための技術です。Bluetoothの標準化団体のBluetooth SIGが策定し、2021年に使用が発表されました。主に以下のような4つの特徴があります。

  1. 低消費電力で動作するため、電池持続時間が長い
  2. 従来のBluetoothに比べてデータ転送速度が高速
  3. 多くのデバイスとの接続が可能
  4. 位置情報を利用した新しい活用法が期待される

これにより、TWS(完全ワイヤレス)イヤホンなどのオーディオ機器で、より長時間の連続使用が可能になると期待されています。また、屋内位置情報サービスの実現により、新たなユースケースの創出が見込まれています。

LE Audioの概要と実現できること

従来のBluetoothイヤホンを使ったことがある方も多いと思いますが、電車の中などの混雑した場所で使用すると、音声が途切れたりするのを経験したことがあるのではないでしょうか。これは、多くのBluetooth機器が同じ空間で使用されていることで、電波が混信してしまうためです。

LE Audioでは、この混信の問題を改善する新しい技術が採用されています。簡単に説明すると、LE AudioではBluetooth機器にIDを割り当て、機器同士が直接通信できるようになります。これにより、電波が混信せず、安定した通信が可能となります。

たとえば、電車の中に10人の方がLE Audioのイヤホンをつけていたとしましょう。この場合、通常のBluetoothだと10台分の信号が混ざってしまいますが、LE AudioならそれぞれのイヤホンにユニークなIDが割り当てられるので、混信せず安定した通信ができるのです。

また、LE Audioには低消費電力という特徴もあります。Bluetoothイヤホンを長時間使うと、バッテリが持たなくなって充電が必要になりますよね。LE Audioなら、電力効率が高く設計されているため、より長時間使用できるのが魅力の1つです。充電の手間が少なくなるぶん、便利に使えそうです。

さらに、LE Audioには高音質な音声伝送も可能です。CD並みの音質を実現できるので、音楽をBluetoothで聴く場合、これまで以上に臨場感のある音が楽しめることになるでしょう。

そのほか、LE Audioには位置情報を活用したサービスも実現できると言われています。たとえば美術館でLE Audioを使うと、展示作品の説明をその場で音声ガイドとして聞くことができたり、空港では案内表示と連動したナビゲーションが利用できるようになるかもしれません。

今後、LE Audioを搭載したさまざまなデバイスが登場してくると思いますが、とにかく混雑時の通信安定性が高い、長時間使用できる、高音質が実現できる、という点が大きなメリットだと言えそうです。

オーディオ機器に詳しくなくても、「新しいBluetooth」というイメージで理解していただければ、LE Audioの特徴は伝わったのではないかと思います。今後のさらなる技術革新にも期待したいですね。

LE Audioの4つのメリット

この記事の冒頭でもお伝えしたとおり、LE Audioには主に4つの特徴(メリット)があります。その4つの特徴についてひとつずつ具体的に解説します。

1.低消費電力で動作するため、電池持続時間が長い

ワイヤレスイヤホンなどを長時間使うと、バッテリーが切れてしまうのが悩みのタネですよね。例えば電車の長距離移動の際に充電できないと、途中で音楽を聴くのが止まってしまいます。

これは、Bluetoothには電波を送信するために一定の電力が必要だからです。電波を出し続けているとバッテリーを消耗してしまうのです。

LE Audioでは、新しい技術によって、電波の送信に必要な電力量を抑える設計が施されています。分かりやすくいうと、電波の光をうまく集中させることで、無駄なくエネルギーを節約できるようになったのです。

これにより、同じ電池容量でも、LE Audioの機器の方が長時間駆動できるようになります。電車の長旅でも途中で充電することなく、音楽を聴き続けられるのです。

また、電池の充電間隔が長くなるので、充電の手間が省けるメリットもあります。いちいち充電を気にすることなく、ワイヤレスイヤホンを持ち歩けるようになるでしょう。

この低消費電力化は、LE Audioならではの大きな特徴です。従来のBluetoothよりもはるかに電池持続時間が伸びるため、ユーザー体験がより快適になると期待できそうです。

技術的な部分はある程度黒箱にして、「電池持ちが良くなる」という点に注目していただければ、LE Audioのメリットがイメージしやすいのではないでしょうか。

2.従来のBluetoothに比べてデータ転送速度が高速

Bluetoothで音楽をワイヤレス再生する場合、音が途切れたりする場合があり、実際に経験されたことのある方もおおいのではないでしょうか。この原因はBluetoothでデータを送るスピードに限界があるためです。

例えば、高音質な音楽ファイルを転送する場合、通常のBluetoothでは処理しきれず、音声信号が途切れてしまうのです。

LE Audioでは、音声データを送受信する際の通信速度が、従来の約2倍に高速化されています。これにより、より大容量のデータである高音質音源も、滑らかに転送できるようになりました。

分かりやすく例えると、データ転送の「パイプ」が太くなったイメージです。大量の水を通せる大きなパイプを用意することで、充分な流量を確保できるようになったと考えてください。

これにより、CD並みの音質の音楽をワイヤレス再生できるようになるのです。先ほどの例えで言うと、LE Audioなら高音質音楽の「水」を豊富に流せるようになったとイメージしていただければと思います。

データの送信スピードを上げることで、音楽や動画を快適に楽しむことができるようになるでしょう。通信の途切れにイライラすることなく、ストレスなくメディアをワイヤレスで利用できるのは嬉しいことだと思います。

以上、通信速度の向上によるメリットを、分かりやすく説明させていただきました。技術的な話はある程度省き、イメージの部分に注目していただければ幸いです。

3.多くのデバイスとの接続が可能

Bluetoothイヤホンなどを使用する際、ペアリングという接続処理が必要です。たとえばスマホとイヤホンをつなぐ時などに、事前に接続設定を行います。

一般的なBluetoothでは、ペアリングできる機器数に制限があるため、たとえばスマホとタブレット、PCなど複数の機器を接続するのは難しいのが現状です。

LE Audioでは、この接続できる機器の数が大幅に拡張されました。開発元によると、同時に10台以上のデバイスと接続できるとのこと。

これにより、自宅にあるテレビやスマートスピーカー、携帯するスマホやタブレット、パソコンなど、複数の機器でシームレスにLE Audioイヤホンを使えるようになります。

例えば、自宅だけでなく外出先でも、LE Audioイヤホン1つで、スマホとタブレット双方の音をワイヤレスで楽しめるようになるのです。機器を切り替える手間が省けるので、とても便利だと言えます。

多数のデバイス接続を実現するために、技術的にはLE Audioの通信方式を改良しているそうです。

ただしその技術的詳細には立ち入らず、「いろんな機器と簡単につながる」というユーザメリットに注目していただければと思います。LE Audioなら、よりシームレスなデバイス体験が実現できそうです。

4.位置情報を利用した新しい活用法が期待される

LE Audioには、Bluetoothでつながった機器の位置を特定することができる機能が搭載されています。

例えば美術館でLE Audioのイヤホンを着用していると、自分の位置をイヤホンが判断し、最寄りの展示作品に関する解説をその場で音声で聞くことができます。

もしくは空港の場合、イヤホンが自分の居場所を特定し、目的のゲートへの誘導案内が正確に行えるようになります。

このようにLE Audioでは、位置情報を活用した新しいサービスが可能になります。技術的には、Bluetooth信号を使って機器の位置を推定する仕組みをLE Audioに取り入れています。

ユーザーから見ると、イヤホンに「自分の場所が分かる機能」が搭載されている、とイメージしていただければ良いと思います。

位置情報を活用することで、音声ガイドやナビゲーションなど、場所に合わせた情報を自動で提供してくれるサービスが未来には増えてくるでしょう。

またレストランでの呼び出しや、店内でのキャンペーン通知など、店舗サービスとの連携も考えられます。LE Audioならではの位置情報機能は、ユーザー体験をよりスムーズにすると期待できそうです。

LE Audio対応のイヤホン

現在、LE Audioに対応しているイヤホンは、まだそれほど多くありません。そのうちの一部を紹介します。

SONY WF-1000XM5

ソニーが発売した最新のハイエンド完全ワイヤレスイヤホンです。ANCと音質性能の高さが特徴的で、ワイヤレスイヤホンの新定番として高い評価を集めています。

SONY LinkBuds S

SONY LinkBuds Sは、ソニーが2022年に発売した新しいワイヤレスイヤホンです。耳をふさがないリスニングスタイルで音楽を聴きながら外音も自然に聞こえる新しいスタイルで、小型+軽量で快適な装着感もポイントです。

JBL TOUR PRO 2

JBL TOUR PRO 2は充電ケースに液晶ディスプレイを搭載しているスティック型の完全ワイヤレスイヤホンです。JBLのフラグシップモデルとして高音質と高いANC性能が魅力で、長時間再生も可能となっています。

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EarFun Air Pro 3

EarFun Air Pro 3は1万円未満で買えるワイヤレスイヤホンの中では最も音質とANC性能に優れた、コストパフォーマンスの高いスティック型のワイヤレスイヤホンです。

ANIMA ANW02

イヤホンブランド Acoustuneが手掛けるANIMAの完全ワイヤレスイヤホンです。ハイレゾクオリティの高陰湿サウンドが特徴で、Snapdragon Soundにも対応しています。

Smapdragon Soundについてはこちらの記事にまとめています。

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LE Audio対応のスマートフォン

現在、LE Audioに対応しているイヤホンはまだ少なく「Xperia 1 Ⅳ」「Xperia 5 Ⅳ」となっています。

LE Audioのまとめ

これまで見てきたように、LE Audioにはさまざまなメリットがあります。混雑時の通信品質が向上し、長時間の使用が可能になります。また、高音質再生にも対応しているため、音楽をより楽しむことができます。

加えて、位置情報の活用によって、音声ガイドやナビゲーションといった新しいサービスも実現できるでしょう。今後はLE Audioを搭載した様々なデバイスが登場し、ユーザーの利便性がさらに向上することが期待されます。

これまでとは比べ物にならない快適なワイヤレス体験を、LE Audioは私たちに約束してくれています。既存のBluetooth音声機器のストレスを感じているなら、ぜひLE Audioの訪れを楽しみにしてみてはいかがでしょうか。きっと私たちのデジタルライフは、より便利で快適なものへと進化するに違いありません。

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