SONY MDR-M1とMDR-M1STの違いを徹底比較。初心者でも失敗しないモニターヘッドホンの選び方

「とりあえず安いヘッドホンで…」と思っていたのに、音がこもる・定位が掴めない・ミックスが外で聴くと違う──そんな経験はありませんか?

音楽制作の最初の壁は、“自分の音を正しく聴けない”こと。その悩みを解決してくれるのが、ソニーのモニターヘッドホン 「MDR-M1」 と 「MDR-M1ST」 です。

どちらもプロの音を再現できる本格派ですが、実際に使ってみると“方向性がまるで違う”モデルになっています。この記事では、音楽制作をはじめたばかりの方でも迷わず選べるように、それぞれの特徴について分かりやすく解説します。

\音楽的な快適さを求めるならMDR-M1/

 

\モニターの精度を求めるならMDR-M1ST/

モニターヘッドホンって何?リスニング用との違い

市販のリスニング用ヘッドホンは「聴いて気持ちいい音」を作るため、低音や高音を強調してチューニングされています。一方、モニターヘッドホンは「録音した音を正確に聴く」ためのツール。いわば顕微鏡のように音を観察するための機材です。

たとえば、J-POPの完成版を聴くとベースが気持ちよく鳴っていますが、制作段階では低音が暴れていないか、ボーカルが埋もれていないか、細部まで確認しなければいけません。モニターヘッドホンはその「細部」を正確に見せてくれる存在。

ただし、音がフラットすぎるため、最初は「地味」「迫力がない」と感じることも。でもそれが正解なんです。派手に聴こえない=余計な色づけがない、という証拠。プロはこの“真っすぐな音”を基準に作品を磨き上げていきます。

初心者がモニターヘッドホンを導入する最大のメリットは、音作りの失敗を防げることです。

家で作った曲を車で聴いたらバランスが崩れていた──そんな悩みの原因は、再生環境の色づけによる“誤聴”です。モニターヘッドホンなら、どんなスピーカーでも破綻しないバランスを作る練習ができます。

MDR-M1とMDR-M1STのスペック比較

MDR-M1とMDR-M1STの基本スペック比較を比較すると下記のようになります。

モデル インピーダンス 重量 再生周波数帯域 ケーブル 用途
MDR-M1ST 24Ω 約215g 5Hz〜80kHz 2.5m スタジオ/プロ
MDR-M1 50Ω 約215g 5Hz〜80kHz 1.2m/2.5m DTM/リスニング

どちらも見た目や帯域は似ていますが、設計の狙いがまったく違います。

MDR-M1ST は、CD900STの後継としてスタジオ業務に特化。ミキサーやオーディオインターフェースなど、どんな機材にも対応できるよう低インピーダンス設計。2.5mケーブルは“現場での信頼性”を優先しています。

対して MDR-M1 は、海外市場と一般ユーザーを視野に開発された“民生版モニター”。家庭用機材にもマッチする50Ω設計で、初めて買う人でも安心して使えます。

再生帯域はどちらも超広域(5Hz〜80kHz)。つまり「人間の可聴域を超える情報まで再現できる」スペックですが、実際の聴こえ方はかなり異なります。

M1STは中域重視で“録音現場のモニター感”、M1は高域の伸びと空間の広がりを両立した“クリエイティブ向け”の音。似た数値でも、チューニング思想の違いが音のキャラクターを大きく分けているのです。

MDR-M1とMDR-M1STの音質の違い

同じ曲を2つのモデルで聴くと、その差はすぐに分かります。MDR-M1STは、音像が中央に凝縮し、ボーカルやスネアの輪郭がくっきり浮き上がります。リバーブの尾が短く、音場がタイト。つまり「現場で音をチェックするための音」です。

ノイズ、リップノイズ、ピッチのズレなどが鮮明に聴こえるため、ミックスやレコーディングでの“粗探し”に最適。一方で、音楽を楽しむには少し硬く感じる人もいます。

一方、MDR-M1は中高域が滑らかで、リバーブや空間の奥行きが自然。ピアノやアコースティックギターの余韻が心地よく、リスニング感覚でも楽しめます。低域もタイトながら量感があり、ベースやキックのバランスが取りやすい。

DTMでボーカルと伴奏のバランスを整える作業では、MDR-M1の方が“聴きながら作れる”感覚が強いでしょう。

どちらも正確ですが、目的が違います。録音現場の判断精度を求めるならM1ST、曲を作りながらインスピレーションを大切にしたいならM1が向いています。初心者が最初に手に取るなら、ややマイルドで聴きやすいMDR-M1の方が馴染みやすいでしょう。

MDR-M1:音楽を“創る”人のためのバランス型

一方のMDR-M1は、M1STの技術を受け継ぎながら、音楽を楽しみながら正確に作るためのチューニングがされています。

  • 高域がスムーズで、ボーカルやアコギの倍音がきれい。
  • 音場が広く、リバーブや残響の広がりが自然。
  • 低域は締まりつつも量感があり、打ち込み・ベース・ドラムがしっかり聴こえる。

一言で言えば「聴き疲れしないプロ音質」。長時間の作曲や宅録でも快適で、初心者が最初に“信頼できる音”を得られるモデルです。

MDR-M1ST:音を“監視”する精密ツール

M1STは、ソニーとソニーミュージックスタジオの共同開発。

「現場で音を見逃さないこと」が最優先の、超ストイックなモニターサウンドです。

  • 中域が太く、定位・輪郭がくっきり。
  • ノイズ、リップノイズ、歪みなどが鮮明に聴こえる。
  • 高域がシャープで、長時間の作業ではやや耳が疲れやすい。

要するに、“音の粗まで丸見え”。ミックス・録音の精度を求めるバンドマンやエンジニアには最強ですが、リスニングや作曲段階では少しシビアに感じる人も多いです。

MDR-M1とMDR-M1STの装着感・使い心地

音楽制作では、1〜2時間どころか5〜6時間ヘッドホンをつけっぱなしになることもあります。だからこそ、「装着感」は軽視できません。

MDR-M1 は、ふかふかのイヤーパッドが耳全体を包み込み、側圧(締め付け)が弱め。装着した瞬間に“軽いのに安定してる”と感じる人が多いです。通気性もよく、長時間DTM作業や動画編集でも蒸れにくい。まさに“作業に寄り添う快適さ”です。

一方 MDR-M1ST は、パッドがやや硬めで側圧も強め。その分、頭の動きにしっかり追従し、スタジオ収録や演奏中でもズレません。安定性を重視する現場仕様ですが、何時間も装着すると耳の上部が少し痛くなることも。

ただし、交換パッドを使えばフィット感を調整可能。純正以外の互換パッドも流通していますが、音質変化があるため要注意です。

結論として、長時間の作業やリスニングならMDR-M1、短時間の録音やリハーサルならM1ST が快適。装着感の違いは実際に店頭で体験すると一目瞭然です。
  • MDR-M1:ふかふかのイヤーパッド+弱めの側圧で、軽快かつ長時間でも快適。DTMで5時間以上使っても耳が痛くなりにくい。
  • MDR-M1ST:パッドが硬めでしっかりしたフィット感。スタジオでの安定性は抜群だが、長時間だと疲れやすい。
どちらも交換パッドに対応していますが、互換性はなし。交換時は必ず専用品を選びましょう。

MDR-M1とMDR-M1STのケーブルとメンテナンス性

    MDR-M1とMDR-M1STは、どちらも着脱式ケーブル(リケーブル対応)を採用しています。断線してもケーブルを交換すればすぐ復活できるため、長く使えるのが魅力です。
    ただし両モデルで端子構造が少し異なり、ケーブルの互換性はありません。交換やリケーブルの際は、それぞれ専用の純正ケーブルを選ぶようにしましょう。

    MDR-M1には1.2mと2.5mの2本が付属し、宅録やリスニング、演奏など用途に応じて使い分け可能。

    一方MDR-M1STはプロ現場向けに設計され、ロック機構付きで接続がより堅牢です。どちらも音の劣化が少なく、安定した信頼性があります。

    また、イヤーパッドやヘッドバンドも交換でき、ソニー純正パーツの供給も安定しています。使用後にパッドを軽く拭き、ケーブルを無理に曲げず保管すれば、“相棒”として何年も使えるヘッドホンです。

    ただし、両モデルは外観が似ていますが、ハウジングの形状・固定リングの径・パッド厚みが異なるため、イヤーパッドには互換性がありません。

    用途別おすすめと失敗しない選び方

    目的 おすすめモデル 理由
    DTM/宅録/作曲/動画編集 MDR-M1 バランスが良く、長時間の作業に最適。リスニングにも◎
    レコーディング/スタジオ/プロ現場 MDR-M1ST ミスやノイズの検出力が高く、音の輪郭を正確に確認できる
    趣味で幅広く使いたい MDR-M1 保証・快適性・音質のバランスが取れていて“失敗しない”一本

    MDR-M1:創作・宅録・長時間作業に最適。

    M1は「長時間のDTMでも耳が疲れない」「ボーカルの定位が掴みやすい」「ミックス後の再生環境の差が減った」といった特徴があり、特に宅録初心者にとっては、“音の見通しが良くなる”感覚がわかりやすいモデルです。

    MDR-M1ST:録音・現場・プロ用途向け。

    M1STは「音が近く、細部が手に取るようにわかる」「リハでギターの歪み量を瞬時に判断できる」「ノイズチェックに最適」などの音質チェックを重視したい方にお勧め。ただし、“長時間作業だと疲れる”“高音が少し刺さる”という声もあり、用途を見極めないとストレスにつながります。

    よくある質問Q&A

    Q1. MDR-M1とMDR-M1STのイヤーパッドは互換できますか?

    互換性はありません。形状と厚みが異なり、装着しても密閉性が合わないため音質が変わってしまいます。交換時はそれぞれ専用の純正パッド(M1用・M1ST用)を選びましょう。

    Q2. 両モデルともリケーブル(ケーブル交換)はできますか?

    はい、どちらも着脱式ケーブル対応です。ただし端子構造が異なるため、ケーブルの互換性はありません。純正または対応ケーブルを使用してください。MDR-M1には1.2mと2.5mの2本が付属します。

    Q3. DTM初心者でも違いは分かりますか?

    分かります。M1は音の広がりが自然で聴きやすく、M1STは中域が濃くディテールが際立ちます。宅録や作曲にはM1、レコーディングや音のチェック重視ならM1STがおすすめです。

    Q4. 長時間使うならどちらが向いていますか?

    MDR-M1の方が向いています。ふかふかのパッドと軽い側圧で、4〜5時間の作業でも耳が痛くなりにくい設計。M1STはフィット感重視で、短時間の録音やリハーサル用途に最適です。

    Q5. 音楽以外(配信・ゲーム・動画編集)でも使えますか?

    どちらも高解像度で定位が正確なので、ゲームや動画編集にも十分対応できます。快適さと汎用性を重視するならMDR-M1、正確な音判断を求めるならMDR-M1STが適しています。

    MDR-M1とMDR-M1STの比較まとめ

    MDR-M1とMDR-M1ST。どちらもソニーが誇るスタジオクオリティのモニターヘッドホンで、音の解像度・耐久性ともに一級品です。共通して言えるのは、「どちらを選んでも音質面での後悔はない」ということ。失敗するケースの多くは、用途のミスマッチです。

    “モニター精度”を求めるのか、“音楽的な快適さ”を求めるのか──そこを自分で整理できれば、正しい選択ができます。

    • MDR-M1:創作・宅録・長時間作業に最適。音が自然で疲れにくく、リスニングにも使える万能型。

    • MDR-M1ST:録音・現場・プロ用途向け。中域の再現性が高く、ノイズ検出力に優れる“現場の監督”。

    最後に伝えたいのは、“音を信じられる道具”を持つことの大切さ。ヘッドホン一つで、あなたの音楽はもっと鮮やかに、もっと自由に変わります。その最初の一歩を、MDR-M1/MDR-M1STと共に踏み出してみてください。

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